1.イスファハン |
テヘランから南へ約420km、イラン国土のほぼ中央に位置するオアシス都市。約2,600年の古い歴史を誇り、数多くの遺跡や建築物が今も残っています。シャー・アッバス時代には首都として栄え、ペルシャ絨毯に強い関心を抱いた王は、カシャンに次いで王立工房を設け、宮廷職人を育成し、各地から腕の立つ職人を集め手厚い保護を与えたため、この地は絨毯の一大産地となりました。サファビ王朝崩壊後、一時下火となった絨毯製作は、19世紀末から再び隆盛となり、今では、ペルシャ絨毯の中でも最高級品のひとつとされる品質を実現しています。この地の絨毯は、繊細な色調と精緻な織りに加え、リズミカルで精巧な、メダリオンから広がる唐草文様が代表的なデザインの特徴となっています。 |
2.コム(クム) |
イスラム教の始祖マホメットの娘ファティマを安置したマスメ寺院のある聖地。古くから学問の地として栄え、現在でも市内に300にのぼるモスクとマラドサと呼ばれる教学院が残っています。絨毯の生産は歴史が浅く1930年半ばからカシャンの指導で始められ、短期間で飛躍的な発展を遂げました。この地は、絹の産地としても有名です。近年は、シルク絨毯の製作に重点をおき、イスファハンやカシャンのデザインを巧みに取り入れ、新しい創作柄にも意欲的に取り組んでいます。また、パステルカラーを基調とした独特の色彩感覚のものが多くみられます。 |
3.ナイン |
イスファハンの北東郊外にある小さな高原都市。イスファハン、コム(クム)と並び称されるペルシャ絨毯の重要な産地のひとつです。イスファハンの指導で始められた絨毯の生産は1930年代から。柔らかい羊毛をベースに絹を織りまぜて、経糸には綿糸を使用したものが一般的です。デザインは、正統派好みの古典的なものが多く、緻密な文様デザインはイスファハンのものとよく似ています。色彩は、クリームやベージュなどを基調としたソフトな色と濃紺に限られることが多く、全体的に抑制されたトーンになっているのが配色の特徴です。 |
4.タブリーズ |
テヘランの北西約620kmに位置するオアシスの小都市。標高1,367mの農業を主とする町で、かつては、バクーやカスカズへ通じるヨーロッパ文化の窓口として商業も栄えました。絨毯製作の歴史も古く今も主要市場のひとつとなっています。原料となるぺルシャ羊を最も多く産出する地としても有名です。イランで最も近代的といわれ、徹底した品質管理で高い評価を獲得しています。この地の絨毯は、コーカサス風の幾何学模様で知られ、動植物を巧みにアレンジしたデザインのものが多く見られます。また、トルコ結びでゴブラと呼ばれる独特なカギ針を使用して織られる緻密な織り目と正確な文様が特徴です。壁掛用の絵絨毯(ダブロー)肖像画や細密画なども上質のものが多くつくらています。 |
5.カシャン |
「美しいタイルの町」という意味をもつサファビ朝期に栄えた古都。テヘランから南へ約260km、砂漠と緑地地帯にはさまれた工業地帯にあり、古くから絨毯と絹織物の産地として有名。この地で絨毯製作が盛んになったのは、サファビー朝時代からと言われ、多くの傑作がつくられたと伝えらています。絨毯は、ウール製のものが中心で、花や蔓草、シャーアッバス文様などを配したメダリオンコーナーデザインが有名です。保守的とされるこの地域の気質を反映し、古典的なデザインパターンを守り続けており、イランの家庭で広く使われているのがこのカシャンの絨毯です。 |